スポンサーサイト

  • --/--/--(--) --:--:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

題名の割には、優しい語り口です。

  • 2008/03/10(月) 21:10:09

<定規でひいたような直線が特徴ある蓬田やすひろさんの表紙絵>
本sawadahagureno

澤田ふじ子著『はぐれの刺客』
表紙絵は、馴染み深い蓬田やすひろさんの手になるもので、この小説の一場面が描かれています。殺伐とした暗殺シーンなのですが、直線的で、沈んだブルーグレーを基調に配色され、動きの乏しい人物描写が緊迫感がなく宜しい。

武家社会の悪弊が描かれています。武士の子供は中身がなくとも長男が最優先で、次男三男は、たとえ優秀でも、他家への入り婿でもしなければ、一生“厄介”としてうだつの上がらぬ生活を強いられる。この次男三男のうち悍馬なものほど、何かと大きな不満を募らせていく。
主人公は素晴らしい剣技を持つが、疎んじられ、世に出て行く機会を閉ざされ、鬱屈して生きていく。好きな女性にも友人にとられ、たまさか強盗達を見事に成敗すれば、それをお咎めされる。

何をなしてもうまくいかない人生と、逃亡の毎日。罪を許されても帰参するれば、また事件が起こる。たまたま彼を援助してくれた人物は元、彼が退治した強盗の首領分で、この出会いは美しい。
全体にお話が哀れみと優しさで書かれていて、主人公の惨めな生活に同情的で、読む立場のものをよくわきまえた豊かな小説でした。

昨年12月に「鴉婆(からすばば)」の次は、「山姥(やまんば)」という話を書いた時にも、澤田ふじ子さんが後書きに寄せた言葉が素晴らしいことを紹介している。

この『はぐれの刺客』は、武芸は達者だが、徹底して不運にみまわれ、はぐれ者の烙印を押された一人の若い武士が、どう生きどう死んだかを追って描いた。
いまの社会でも同じだが、かつての社会は、いまよりもっと公平ではなかった。主人公に似た人物を探せば、意外とわたしたちの身の廻りにも、多くいることに気づかされる。
わたしは江戸時代を舞台にしているだけで、人間がいまでもそなえている不変の属性を、かいているつもりなのである。


これはあとがきの一部でありますが、この前の長い文章には現代社会や、企業のあり方などを問う重大なテーマが語られています。
たんに出版社や協力者への謝辞であったり、自己満足的な記載だけが書かれているような“あとがき”とはひと味違っています。
スポンサーサイト

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。