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「人の心を想う」思いやり小説

  • 2008/04/03(木) 11:17:50

<いびつな茶碗が並ぶ山本祐布子さんの表紙絵>
本yamamotoomou

山本周五郎著『想う』、山本周五郎中短篇秀作選集の第三巻であります。
この選集は第五巻まであり、おのおの漢字一文字、ひらがな一文字の言葉でまとめられています。

第一巻 待つ
第二巻 惑う
第三巻 想う
第四巻 結ぶ
第五巻 発つ


その第三巻には、

「壺」「松の花」「春三たび」「藪の蔭」「おもかげ」「萱笠」
「墨丸」「風鈴」「彩虹」「七日七夜」「ほたる放生」
「ちいさこべ」「あだこ」「ちゃん」「その木戸を通って」


以上十五遍の中短篇が掲載されています。

どんな苦境にあっても、
一途に相手を想う、明日を描く。
生誕100年の時を越え、
いま新たに蘇る珠玉の作品の数々。


どの物語を読んでも、人を思う優しさにあふれています。
殺伐としたニュースの多い中、こんな物語の中へ逃避したくなるのも、優しい人間の自我であるかも知れません。

時折山本周五郎作品に不思議に思われることがあります。
この本はまだ新漢字であったり、新仮名遣いであったりしますから、読みやすいのですが、かなり難解な漢字使いをするところと、え!こんな字書いてるというような簡単なひらがな書きなどが混在します。何かの意図がおありなのでしょうが、例えば“御主君”が“御しゅくん”という風になっている。探せばきりなくありますし、凡例の解説文にてもそこのところはわかりません。

この作家の本質的魅力をつぶさに感じさせる文面があるので引用しますと、

「その人たちには私が栄(は)えない役を勤め、いつまでも貧寒でいることが気のどくににみえるのです。なるほど人間は豊かに住み、暖かく着、美味をたべて暮らすほうがよい、たしかにそのほうが貧窮であるより望ましいことです。なぜ望ましいかというと、貧しい生活をしている者は、とかく富貴でさえすれば生きる甲斐があるように思いやすい、・・・・・美味いものを喰い、ものみ遊山をし、身ぎれい気ままに暮らすことが、粗衣粗食で休むひまなく働くより意義があるように考えやすい、だから貧しいより富んだほうが望ましいことはたしかです、然しそれで思うように出世をし、富貴と安穏が得られたら、それでなにか意義があり満足することができるでしょうか」

「・・・・・おそらくそれで意義や満足を感ずることはできないでしょう、人間の慾望には限度がありません。富貴と安野が得られれば更に次のものが欲しくなるからです」

「たいせつなのは身分の高下や貧富の差ではない、人間として生まれてきて、生きたことが、自分にとってむだでなかった、世の中のためにも少しは役だち、意義があった、そう自覚して死ぬことができるかどうかが問題だと思います、人間はいつか必ず死にます、いかなる権勢も富も、人間を死から救うことはできません、私にしても明日にも死ぬかもしれないのです」


この章では有能な貧しい身分の低い主人公が、周りや親類に転職を勧められ、それをやんわりと断るシーンに、主人公が長々語るのです。
時代小説は、主に身分制度が優先され、主君に仕えることが武士の生きる基本であります。
滅私奉公の言葉もありますが、“私事(わたくしごと)”は二の次の時代に、自分の生きざまについてこの様に語る主人公は、作家山本周五郎さんの分身なのでしょう。
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